レディ・ジョーカー 下巻(新潮文庫)

シリーズものを読んでいると、登場人物について記憶があやふやになるため、書き留めておくシリーズ。

合田雄一郎編だったはずが、合田と加納の関係編になってしまった。

 

このまま曖昧な関係で『レディ・ジョーカー』は終わると勝手に思っていたんですが、想像以上の進展がありました。 

 

第五章 一九九五年秋 崩壊

9月3日の午前3時5分に合田の家に訪れた加納は、根来(新聞記者)が失踪しその原因は自分のミスだと自身を責める。

テーブルの上の加納の手をにぎる合田とその手を握り返す加納。

 

この二人の身体的な接触は『レディ・ジョーカー』では初めてでは??

 

9月15日夜。

レディ・ジョーカーのメンバーで刑事でもある半田の上司(三好)が自殺したと聞いた合田は、ともかく逃げ出したい一心で署を出る。帰宅途中に自宅に酒がないことを思い出し、世田谷の馬事公苑に近い加納の自宅へ行く。

2人ともどうしようなく辛い気持ちになると、相手のもとへと行くなんてもう普通の友達じゃないでしょとしか言いようがない。

 

焼身自殺や火に焼かれることについて思いを巡らせる合田だったが、ウィスキーを飲んでいるうちに震えも収まり、9月3日に加納が言ったことが理解できた気がしたと伝える。

今夜もまた、溝に蓋をしたというほうが近い言いっ放しではあった。そして、その物足りなさが一瞬何か疼くような感じになり、これは何だと思ううちに加納と目が合い、また少しどこにも収めようがない焦燥がよぎってゆくのを感じながら、どちらも目をそらせた。

終章

半田に刺される合田だったが、一命を取り留める。

手術のあと、自分を呼ぶ加納祐介の声で麻酔から覚めたとき、最初に見たその目に歓喜はなかった。(中略)元義弟の命が助かることを祈る気持ちと、自分に一言もないまま永遠の別れを告げようとした相手への気持ちは、けっして一つにはならなかったことだろう。加納は、愛する者によってこれ以上はない傷つけられ方をした者の、怒りとも放心ともつかない目をして、まだ朦朧としていた合田の顔に見入り、一言いったのだった。この十八年、君は俺を何だと思っていたのだ、と。

 それから一切顔を見せなくなった加納を合田は想う。

自分はこの十八年、ほんとうに加納の気持ちに気づかなかったのかと自問したが、答えはイエスであり、ノーだった。