レディ・ジョーカー 上巻(新潮文庫)

シリーズものを読んでいると、登場人物について記憶があやふやになるため、書き留めておくシリーズ。合田雄一郎編。

レディ・ジョーカー』は合田雄一郎シリーズの3作目。

私が読んでいるのは新潮文庫なので、一部改変されているようだ。 

1995年から1997年にかけて週刊誌『サンデー毎日』に連載され、1997年12月に毎日新聞社から上下2巻で単行本化された。のち、2010年4月に新潮社より文庫判が上中下3巻で刊行された。文庫本化にあたっては、内容が一部改変されている。 -Wikipediaより  

第一章「一九九〇年 男たち」 

合田の初登場は、巡査部長の半田が品川署へ戻り1階からあがる階段で会う。1990年11月17日土曜日。

すれ違いざまに「失礼」という一声が降ってきた。半田は目だけ上げて、階段を駆け上がっていく男の足元の真っ白なスニーカーを見た。

 捜査本部に出てきている本庁の若い警部補だった。名は、合田といったか。何ということもないスーツとダスターコートの格好はともかく、いかにも軽くて履き心地のよさそうな白いスニーカー一足が、半田の目の中でちかちかした。

1990年は本庁勤務だった模様。文庫の最初の登場人物紹介には「警視庁捜査一課第三強行犯捜査七係」となっている。

 

第二章「一九九四年 前夜」 

1994年11月半ばの日曜日午後6時前に、蒲田駅のロータリー近くで半田が歩いている時にばったり会う。

合田は自転車に乗っていて、服装は白いスニーカー、洗いざらしジーパン、黒っぽいセーター。

相手の男も半田を見ており、同じようにこちらを凝視したが、次の瞬間、凍った水面が裂けるようにして唇が左右に開き、白い歯がこぼれた。 

 二人はここで半田が蒲田署へ異動し、合田は2月に大森署へ移った事がわかる。

記憶にあるひんやりとした爬虫類の顔とは違い、目の前にあるのは、しっとりと艷やかな肌色をして、別世界の鮮やかな笑みをこぼれさせ、短く刈った髪も清々しく端正な、ロボットのような別人だった。

合田が跨っているのは私物らしい普通の自転車で、前のカゴに入っているのは、シャンプーと石鹸などが入った洗面器が一つと、ヴァイオリンケースだった。半田がそのカゴに目をやると、合田はすかさず照れ笑いをつくり、「今日は休みなので、バッティングセンターへ行って、銭湯へ行って、これから地元の集まりに顔を出して」などと言った。 

合田はヴァイオリンを弾くんですね。子供の頃に習っていただけ、と半田には言っていましたが。

地元の集まりとは、蒲田教会でヴァイオリンを弾くことでした。

 

第三章「一九九五年春 ー事件」

第三章は、1995年3月24日(金)の合田視点から始まり、なんどか出てくる。

  • 八潮五丁目アパートに住んでいる
  • 居間は東向きの6畳間で、高速湾岸線の高架が見える
  • 所轄へ移る際に上アパートに引っ越しした(推測含む)
  • 晩酌はウィスキー
  • ビールは飲まない
  • 自炊は少しはしているようだ(推測含む)
  • 毎日、少しの時間でもヴァイオリンに触れるようにしている
  • 練習場所は近所の八潮公園
  • ヴァイオリンは車の購入用に貯めてあったもので買った
  • 離婚してから楽器に触れたのは、初めて
  • 離婚したのは八年前

毎日、たとえ半時間でも楽器に触れるのは、所轄署へ移ってからの一年の間に身につけた生活の小さなリズムだったが、それがジョギングでも竹刀の素振りでもなく、ヴァイオリンになった理由は自分でも不明のままで、考えようとしたこともなかった。欲しいのは生活のリズムですらなく、ただ何も考えない時間なのだということが分かっているだけだった。 

  •  1959年4月生まれ

去年の誕生日に加納からもらったテレビをつけ、BBCのワールドビジネスレポートを聞きながら英単語を書きつけ辞書で意味を確認する合田。

CS放送のチャンネル契約は、スポーツとBBCのみだがどちらも暇つぶし用。

 

義兄の加納祐介との関係は『照柿』で複雑そうだと思いましたが『マークスの山』を読み直せばわかるのかな。

(『マークスの山』はすごい昔に読み内容は全く覚えておらず、『照柿』は一ヶ月ほど前に読み終えメモはとっていなかった。)

しかし誕生日プレゼントにテレビって、実用的で高額だなあという印象。

合田を知る上で加納も外せない気がする。

東京地検の検事をやっている加納は、妹の貴代子が合田と別れて八年も経つが、検察庁の自室で書証を日々整理するようには、元義兄という微妙な自身の立場を整理できないようだった。いまでも、気が向くと、世田谷の官舎に帰るより近い八潮の元義弟のアパートにふらりと現れ、世間話をし、ウィスキーを一、二杯空け、勝手に布団を敷いて寝ていき、朝にはまたいなくなる。学生時代には登山のパートナーでもあったが、どちらも多忙になったいまは山も遠くなり、ここ数年はずっとそんな間柄だった。 

 

記者の根来が情報を求め、加納に電話するシーンがでてくる。

実に清廉な感じのする読書家で、特捜部内では珍しく縦横の閥にも関係がなく、自分をエリートだと思っていないのも珍しい、まだ若い検事だった。 

 

検事は、元義弟の話をするとき、職務上の鎧の下になにがしかの感情生活の方々を覗かせ、その口調もいくらかあいまいになる。元義兄の合田雄一郎という人物は、根来が知る限り、この独身の検事のささやかな私生活を窺わせる唯一の人間であり、検事がそうして誰かのことを語る唯一の人言でもあった。 

 

金曜の夜から自宅に帰っておらず、その間に加納が来たのではないかと、自宅の留守電をチェックする合田。

案の定、加納は電話を入れてきていた。<<いまは。二十六日の午後十時だ。当分君は帰れないだろうと思って、今日は家を覗いておいた。月末の支払いは立て替えておく。落ちついたら、電話をくれ

 この世話の焼き方は、親か半同棲している間柄の恋人かという感じ。